解決実績

当事務所介入により既払い金を除き約1950万円で示談が成立した事案

相談者 80代女性
自覚症状 認知症の増悪により、顕著な自覚症状なし(鎖骨部を痛がっている様子)
傷病名 外傷性くも膜下出血、右鎖骨遠位端骨折ほか
後遺障害等級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するものとして別表第一2級1号(既存障害別表第二3級3号)/鎖骨に著しい変形を残すものとして、12級5号/鎖骨骨折後の機能障害につき、1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すものとして、12級6号/以上を総合して、別表第一2級1号
解決方法 示談交渉
受注から解決までに要した期間 約5か月
ご相談に至る経緯
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するものとして、自賠法施行令別表第一2級2号が認定された被害者につき(既存障害自賠法施行令別表第二3級3号)、当初提示額約800万円であったものが、当事務所介入により既払い金を除き約1950万円で示談が成立した事案」

 本件は、老齢の被害者が横断歩道を歩行中、自動車と衝突して転倒、怪我をされたというご相談でした。被害者は、今回の事故により認知症が増悪して要介護度が増し、家庭裁判所から成年後見人が付されていました。そこで、被害者の娘さんである相談者が、相手方損保会社から提示された賠償額が妥当か否かを知りたいとのことで、当事務所に相談に来られました。

 相談者が当事務所に相談に来られた経緯ですが、当事務所に来られる前にも、別の法律事務所2か所ほどにも相談に行かれていたとのことでした。しかしながら、相談した結果、それらの事務所には依頼できないとのことで、当事務所とお付き合いのある保険代理店様に対し、他の弁護士を紹介してほしいとご相談された結果、その代理店様のご紹介により、当事務所にご相談に来られることとなりました。当事務所におけるご相談の結果、相談者のご意向により、当事務所が代理人として就任して示談交渉を進めていくことになりました(なお、その際、実際の依頼者は、被害者の方の法定代理人である成年後見人となります)。
結果
 本件は、事実上、後遺傷害慰謝料、将来介護費の点が争点となりました。

 相手方の任意保険会社は、被害者が、本件事故の前から要介護状態にあった(実際に、介護保険における要介護認定も受けていました)ため、随時介護を要する状態になったのは、ひとえに交通事故だけが原因というわけではなく、もともとの年齢的な事情もあったはずであるという主張をしてきました。具体的には、交通事故の影響が50パーセント、もともとの素因が50パーセントという主張でした。この点、被害者は、自賠責保険においても、既存障害として3級3号の認定を受けていたため、相手方の主張については、上記既存障害にすべて吸収されていると評価されるべきではないかという点などを検討しました。しかしながら、相手方の言い分にもそれなりの合理性がありましたので、仮に訴訟などに移行した場合、必ずしも当方の言い分が通るわけではないであろうという結論に達しました。

 そこで、この点を相談者と協議した結果、交通事故の影響が約80パーセント、被害者がそもそもお持ちであった素因が約20パーセントというラインで示談を成立させることとし、相手方保険会社も上記内容で折り合ってきたため、既払い金を除き約1950万円で示談を成立させました。

 なお、被害者が80代とご高齢であったため、訴訟などにより年単位で長引かせるよりも、早期解決に至ることが被害者ご自身にとっても重要であろうという点もポイントでした。
ポイント
 本件においては、被害者の要介護度の増悪につき、交通事故と元々の素因がそれぞれどの程度影響を及ぼしているのか、そして、それを賠償額にどのように反映させるべきであるのかという点が大きな問題となりました。自賠法施行令別表第一というのは、交通事故により要介護状態になってしまった場合に適用される、重大な後遺障害が記載されている表です。ご高齢で、もともと要介護状態にあった被害者が、事故の影響でどの程度それが増悪してしまったのかということは、個々のご事情によりまったく異なってきますし、ときに、とても難しい判断を迫られることになります。仮にそのようなケースで法律相談を希望される際は、交通事故問題に詳しい法律事務所にご相談に行かれることをお勧めいたします。

 また、将来介護費が問題となる場合などは、被害者に万が一の事態が生じてしまった場合、賠償額に大きく影響することとなりますので、早期に専門家にご相談されることをお勧めいたします。