解決実績

脊柱に変形を残すものとして後遺障害11級7号の認定を受け、既払い金のほか約500万円で示談が成立した事例

相談者 50代女性
自覚症状 右臀部~下肢外側~足底のシビレ、右足底の痛みほか
傷病名 腰椎捻挫、腰椎すべり症、腰椎椎間板ヘルニア
後遺障害等級 11級7号
解決方法 示談交渉
受注から解決までに要した期間 約1年
ご相談に至る経緯
 本件事故態様は、相談者が信号待ちの停止中、後ろから軽自動車に追突され、腰を打ったというものでした。事故自体は、相談者の車両修理費が10万円に満たないような非常に軽微な事故であり、衝撃もそれほど強いものではありませんでした。しかしながら、相談者は、本件事故後、右臀部から右足底にかけて、激痛やシビレの症状が出現してしまいました。事故が非常に軽微であったにもかかわらず、相談者に非常に重い症状が現れてしまったのは、相談者が、本件事故の前から腰椎すべり症(腰椎椎体が前方にずれてくる状態)、腰椎椎間板ヘルニア、黄色靭帯骨化症等の腰の持病を抱えていたことが原因でした。相談者によれば、腰の症状は事故前からかなり悪かったものの、右足の症状は事故前にはまったくなかったとのことでした。 
 
 相談者は、右足の症状につき、相手方の保険会社からは、交通事故の寄与度が1割相当、もともと持っていた素因(疾病)の寄与度が9割相当であるから、自賠責保険の傷害部分の120万円以上は一切支払うつもりはないといわれていました。また、相手方任意保険会社の担当者の対応自体も、依頼者の依頼を数か月も放置するなど、問題のある対応を繰り返していました。
 
 そこで、事後対応を弁護士に相談したいとのことで、相談者が加入している保険会社のご紹介で当事務所に相談に来られ、そのまま受任となりました。
結果
 相談者は、当事務所に来られるまでに、脊椎固定術(脊椎を固定する手術)を受けておられました。そのため、後遺障害としては、右足のシビレや痛みも含めて、「脊柱に変形を残すもの」として11級7号の認定を受けることができました。
 
 上記後遺障害等級自体は妥当であると判断したため、上記等級を前提に、相手方任意保険会社と交渉しました。争点は素因減額、つまり、残存した後遺障害について、交通事故が寄与した割合と、もともと相談者がお持ちだった素因(疾病)が寄与した割合をどのように考えるかということでした。
 
 当初、相手方の任意保険会社は、後遺障害部分については自賠責保険の331万円しか認定できないとの主張でした(この段階では、交通事故の寄与度が5割、素因(疾病)の寄与度が5割を前提とする提案でした)。しかしながら、相談者は、事故以前に右下肢に症状がまったく出ていなかったものの、交通事故により症状が出現してしまったという状態でしたので、過去の裁判例の傾向からすると、もう少し交通事故の寄与度が高くてもいいのではないかと考えたため、更に交渉を続けました。その結果、最終的には総額として、実質的に交通事故の寄与度が約7割程度、もともとの素因の寄与度が約3割程度というラインで双方が折り合うことができ、既払い金のほか約500万円を受け取ることで示談を成立させることができました。
ポイント
 本件におけるポイントは2点あったと考えています。
 
 まず、相談者がもともとお持ちであった素因(疾病)が、後遺障害にどの程度寄与しているかという素因減額をどのように考えるかということです。本件は、相談者が本件事故の前から明確に腰に疾患を抱えておられましたので、訴訟になった場合、見通しよりも下振れをすることも十分ありえたため、かなり見通しを立てにくかったという事情がありました。この点は、相手方の任意保険会社も同様であったため、このような事情が背景となって、双方がある程度中間的な解決に歩み寄ることにより、早期の示談を成立させることができました。
 
 次に、相談者が抱えていた疾病(黄色靭帯骨化症)が国の難病に指定されているため、手術費用は公費によって賄われていました。そのため、主治医の先生からは、自賠責保険による後遺障害の診断書は書くことができないといわれてしまいました。これは、自賠責保険制度に対する主治医の先生の誤解によるものでしたが、なかなかご理解をいただけず苦労しました。
 
 このため、代替案として、自賠責保険向けでない診断書への記載をご依頼したところ、ご了解いただけたため、上記診断書をもって後遺障害の事前認定を受けました。後遺障害の認定を受けるためには、医師の後遺障害診断書は必須ですが、このように診断書の取付け自体に非常に苦労することもありますので、本件のように特殊な事情のある場合は、主治医の先生にあらかじめ後遺障害診断書作成のご意向を確認しておくことも重要です。