解決実績

非器質性精神障害で12級13号、鎖骨に著しい変形を残すもので12級5号、左頬骨骨折後の神経症状で14級9号、併合11級の認定を受け、既払い金のほか約1280万円で示談が成立した事例

相談者 20代女性
自覚症状 突然の不安感、左肩の痛み、左頬の痛みほか
傷病名 心的外傷後ストレス障害(PTSD)、左肩鎖関節脱臼、左頬骨骨折ほか
後遺障害等級 脳の器質的損傷を伴わない精神障害(非器質性精神障害)で12級13号、鎖骨に著しい変形を残すものとして12級5号、左頬骨骨折後の痛みで局部に神経症状を残すものとして14級9号、以上併合11級
解決方法 示談交渉
受注から解決までに要した期間 約4か月
ご相談に至る経緯
 本件事故態様は、相談者が親族とともに、知人の車に同乗していたところ、知人が自損事故を起こしてしまい、相談者の親族が亡くなられてしまい、相談者ご自身も上記のような怪我を負われたというものでした。
 事故から約2年間の治療を頑張られ、症状固定後、相手方の任意保険会社から約500万円の賠償額の提示を受けていたのですが、当該賠償額の提示が妥当な金額かどうかを確認したいとのことで、当事務所とお付き合いのある保険代理店のご紹介によりご相談に至りました。

 相談者に提示されていた内容は、労働能力喪失率が14パーセント、労働能力喪失期間が5年間という前提で計算されていたため、慰謝料の金額とも併せると、弁護士の立場から見ると、適正な賠償額とはいいがたい提案内容にとどまるものでした。
 そのことを相談者にお伝えした結果、当事務所が代理人として交渉をすることになりました。
結果
 当事務所介入後、当職らからの最初の対案として、慰謝料についてはそれぞれ弁護士基準全額を前提にして、逸失利益につき、当初12年間は併合11級の20パーセント、その後67歳までは併合12級の14パーセントの労働能力喪失率が残存することを前提にして、総額約1400万円の提案をしました(但し、この提案自体は交渉含みの提案です)。
 当事務所からの対案に対し、相手方の任意保険会社からは、鎖骨の変形障害では労働能力は喪失しないのではないか等種々の反論がなされ、1000万円くらいが妥当なのではないかなどの主張がありました。

 その後、双方の主張を調整した結果、1280万円というラインまで双方折り合うことができ、この金額であれば、代理人弁護士としての立場からしても理解することのできる金額であると判断したため、相談者と協議したうえで示談による解決に至りました。
ポイント
 本件のポイントは2点あったのではないかと考えています。
 まず、1点目ですが、非器質的精神障害(PTSD)の労働能力喪失期間をどのように考えるかという点です。例えば、失明や手足の欠損が生じてしまったような場合には、その状態が今後も続き、現在の標準的な医療技術のもとにおいては回復する可能性は限りなくゼロに近いといえるため、67才までの労働能力喪失期間が認められることになるのが通常です。

 しかしながら、非器質的精神障害(PTSD)の場合には、賠償の観点からは、一般的に、将来的には症状の寛解が予想されるものと理解されているため、労働能力喪失期間をどのように考えるべきかという判断が必要になります。

 そして、2点目ですが、鎖骨の変形障害自体が労働能力喪失をもたらすのか否かという点です。この点については、鎖骨の変形だけでは労働能力は喪失しないという考え方も有力に唱えられているというのが現状です。しかしながら他方、鎖骨の変形障害が認められる場合、当該変形部分の痛みも訴えられている方が多いというのも現状です。
 このような場合、痛みの部分も評価の対象として後遺障害の等級が認定されていることが多く、この点の労働能力の喪失を主張することが可能なケースが多いのではないかと思われます。
 ただし、この場合も、その労働能力の喪失期間が争点となることが多いといえますので、そのような場合には、交通事故に詳しい専門家に一度ご相談されることをお勧めいたします。